高級オーディオのダウンサイジング。大型スピーカーの手放し方

高級オーディオのダウンサイジング。大型スピーカーの手放し方

「このスピーカー、次の家には入らないね」。住み替え先の間取り図を広げながら、ご夫婦でそんな話になったことはありませんか。子どもが巣立って部屋は空いたのに、いざ暮らしを小さくしようとすると、いちばん場所を取っているのがリビングの大きなスピーカーだった、というのはよくある話です。

こんにちは、音羽かなでです。音楽教室でピアノ講師を12年しておりました。いまは音楽ライターとして、楽器やオーディオの記事を書いています。我が家は夫が大のオーディオ好きで、私もその影響で、休日はレコードでジャズを聴くようになりました。

その我が家も、大きなスピーカーを手放しています。きっかけは、中学生になった息子が自分の部屋を欲しがり、夫が音楽を聴いていた部屋を明け渡すことになったことでした。重さに驚き、運び出しに頭を抱えましたが、終わってみると「これで良かった」と夫婦で言い合えました。

この記事では、大型スピーカーやアンプのある環境を小さくしたい方に向けて、残す機器の決め方、重さと運び出しの確かめ方、粗大ごみに出す場合のルール、売る前の確認、小さな部屋での組み替え方を順にお話しします。全部を手放す話ではないので、肩の力を抜いて読んでください。

ダウンサイジングは「残す一組」を決めるところから

オーディオを小さくすると聞くと、何から捨てるかを考えがちですが、私がおすすめしたいのは逆の順番です。先に「これだけは残す」という一組を決めて、それ以外を手放します。残すものが決まっていれば、売るか捨てるかで迷う時間はぐっと短くなります。

我が家の場合、夫の部屋には大きなスピーカーと寝室用の小さなスピーカーが一組ずつ、アンプが2台、CDプレーヤーとレコードプレーヤーがありました。夫は1週間ほど悩んで、レコードプレーヤーと気に入っていたアンプ1台、小さなスピーカーを残すと決めました。決め手は「いま実際に何を聴いているか」で、ここ数年はレコードばかりで、CDはほとんど回していなかったのです。

残す一組を選ぶときは、次のような目安で考えてみてください。

  • いちばんよく聴く音源(レコード、CD、配信)を再生できるか
  • 新しい部屋に置いたとき、スピーカーの周りに少し空間を取れるか
  • 夫婦だけで動かせる重さか
  • 故障したとき、修理を頼める当てがあるか
  • 聴く時間帯と、その時間に出せる音量に合っているか

選ぶ作業でつまずきやすいのは、機器の性能より気持ちのほうです。持ち主にとって大きなスピーカーは、若いころに思い切って買った記念であり、何百枚ものレコードを一緒に聴いてきた相棒でもあります。家族が横から「もう要らないでしょう」と言ってしまうと、話はそこで止まります。我が家では、私は口を挟まずに、夫が自分で決めるまで待つことにしました。

もうひとつ、スピーカーとアンプは組で考えてください。残すスピーカーをどのアンプで鳴らすのか、手放すアンプとスピーカーはまとめて出すのか。ここを家族で先に話しておけば、当日になって「あのアンプは残すつもりだった」という行き違いが起きません。

大型スピーカーを手放す前に、重さと運び出しを確かめる

粗大ごみに出すにしても、お店に売るにしても、大型スピーカーはまず家の外まで運び出さなければなりません。どの手放し方を選ぶかは、この運び出しを誰がやるかで決まってきます。

1本35kgのスピーカーも珍しくありません

メーカーが公開している仕様表から、重さの例を1つ挙げます。ヤマハのNS-5000の仕様によると、外形寸法は幅395mm×高さ690mm×奥行381mmで、質量は1台35.0kgです。30cmのウーファーを積んだ3ウェイのスピーカーで、左右2本を合わせれば70kgになります。

35kgは、お米の10kg袋を3つ半まとめて抱えるのと同じ重さです。しかもスピーカーは持ち手のない箱で、角をぶつければ傷がつき、前面のユニットを指で押してしまえば振動板がへこむおそれもあります。我が家も夫と二人で持ち上げてみましたが、階段の手前であきらめました。運び出す前に、階段の幅、エレベーターの有無、玄関までの曲がり角を一度歩いて確かめておくと、当日慌てずに済みます。自分たちで少し動かすだけでも、通り道の床に毛布を敷き、必ず二人以上で持ってください。

元箱と付属品を探しておく

押し入れや物置に元箱が残っているなら、まず出してきてください。購入時の緩衝材がそろっていれば、運ぶときの安心感がまるで違います。あわせて、取扱説明書、前面に付ける布のネット、床に置くためのスパイクや台座、アンプのリモコンも一か所に集めておきましょう。

元箱がない場合は、自分で段ボールを組んで宅配便で送るのはおすすめしません。重いものほど緩衝材が足りないと、輸送中の衝撃で角が割れたり、ユニットがへこんだりしかねません。お店に売るなら、自宅まで来て運び出しまでしてもらえるかを、申し込みのときに確かめておくと安心です。

粗大ごみに出すなら、自治体のルールを先に確かめる

音が出ない、ユニットが破れているなど、売るのが難しい状態なら、粗大ごみも現実的な選択肢になります。ただし、出し方には思っていたより細かな決まりがあります。

スピーカーもアンプも家電リサイクル法の対象外です

テレビや冷蔵庫のように、オーディオにも特別な処分の決まりがあるのではと心配される方がいます。経済産業省の家電リサイクル法のページにあるとおり、この法律の対象はエアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機の4品目で、スピーカーやアンプ、ステレオは入っていません。リサイクル料金を払って販売店に引き取ってもらう仕組みではないので、捨てるなら、まずはお住まいの市区町村のルールに沿って粗大ごみなどに出すことになります。

相模原市の例で見る手数料と出し方

扱いは自治体によって違うので、ここでは神奈川県相模原市を1つの例としてご紹介します。相模原市の粗大ごみの戸別収集の手数料一覧では、スピーカーは1本ずつ、高さと幅で料金が分かれています。

品目大きさ手数料
スピーカー(1本)高さ・幅とも60cm未満400円
スピーカー(1本)高さか幅が60cm以上800円
ステレオセット高さ・幅とも80cm未満800円
ステレオセット高さか幅が80cm以上1,600円
アンプ、プレーヤーなど単体の音響機器―400円

背の高いスピーカーを左右2本出せば、それだけで1,600円です。アンプやプレーヤーも単体で数えるので、一式をまとめて出すと、手数料は思ったより積み上がります。

金額より見落としやすいのが、出し方です。相模原市の粗大ごみの戸別収集の申込方法には、建物の中に入っての収集はしないので、自宅敷地内の建物の外の道路際に出してほしいと書かれています。収集日の朝8時30分までに出す決まりで、混み合う時期は収集日が1カ月以上先になることもあるそうです。つまり、35kgのスピーカーを道路際まで下ろすのは、自分たちの仕事になります。

同じページには、ひとり暮らしの65歳以上の方や要介護認定を受けている方などで、建物の外に出すのが難しい場合に、建物の中から収集する「ふれあい収集」も案内されています。こうした仕組みがあるかどうかも自治体ごとに違うので、お住まいの市区町村のホームページで「粗大ごみ スピーカー」と検索してみてください。

大きなものほど、行き先が決まるまでに時間がかかります。音楽教室を辞める年、統廃合で処分されかけた楽器の引き取り手を探して走り回ったときも、最後まで残ったのは運び出しが大変なものばかりでした。住み替えの日が決まっているなら、そこから逆算して2カ月ほど前には動き始めておくと、売るか捨てるかを落ち着いて選べます。

売る・譲るなら、出す前にここを確かめる

音が出るスピーカーやアンプなら、捨てる前に一度、値段がつくかを確かめてみる価値があります。相模原市の手数料一覧の冒頭にも、粗大ごみとして捨てる前にリユースを検討してほしいと書かれていました。手放し方ごとの違いを、運び出しの手間を中心に並べてみます。

手放し方運び出しお金向いているケース
自治体の粗大ごみ建物の外まで自分で出す(自治体による)手数料がかかる音が出ない、壊れている
出張買取お店に任せられるか事前に確認値段がつけば受け取れる重い、元箱がない、一式をまとめて出したい
店頭への持ち込み自分で車に積んで運ぶ値段がつけば受け取れる近くに店がある、小さめの機器
知人や家族に譲る相手と相談して決める基本的にやり取りはない次に使う人の顔が見えている
フリマアプリ梱包と発送を自分でする売れれば受け取れるが、手数料と送料は自分持ち小さな機器、梱包に慣れている

音出しと傷みの確認は、そっと

査定の前に確かめたいのは、左右両方から音が出るか、アンプのボリュームを回したときに雑音が出ないか、の2つです。気になる点が見つかっても直そうとせず、メモしてそのまま伝えれば十分です。

我が家では、査定の前日に夫が大きなスピーカーの前面のネットを外してみて、ウーファーの縁を囲む柔らかい部分(エッジ)が硬くなり、細かなひびが入っているのに気づきました。夫は「直してから出そうか」と言いましたが、結局そのまま出して、査定の方に見てもらっています。エッジを修理してから売るべきかどうかは話が長くなるので、別の記事で改めてお話しします。

お店に問い合わせるときは、スピーカーとアンプの型番、買ったおおよその時期、気づいている傷みの場所を先に伝えましょう。型番は本体の背面や底面のラベルに書かれていることが多いので、重い本体を動かす前にスマートフォンで写真を撮っておくと、電話やメールの段階で話が早く進みます。

スピーカーは左右2本で1組です。片方だけ傷んでいても、2本そろえて出してください。そのうえで、どこに出すか迷ったら、オーディオの扱いに慣れた店で一度査定を受けてみましょう。中古の相場は時期と状態で変わるので、提示された金額に納得がいかなければ、どこを見てその値段になったのかを遠慮なく聞いてかまいません。

小さな環境で音楽を続ける、組み替えのヒント

大きなスピーカーを手放すと、音楽そのものから離れてしまいそうで寂しい。そう感じる方もいると思いますが、我が家で起きたのは反対のことでした。

夫は残した小さなスピーカーを本棚の高さに置いて、ソファに座ったときの耳との距離を近づけました。大きな音を出さなくても聴きやすくなったそうで、夜に音量を絞ってレコードをかける日が増えています。「音は小さくなったけど、聴く時間は増えたな」と夫がつぶやいたとき、手放して良かったのだと思えました。

売ったお金で小さな機器をそろえる、という組み替えもできます。楽器でもオーディオでも、減らすのではなく、いまの暮らしに合う形に入れ替える。私はこれを「持ち方を変える」と呼んでいて、子どもが辞めたピアノ、置き続けるコストと手放す選択肢でも同じ考え方をお話ししました。

手放した大きなスピーカーも、どこかの広い部屋で、次の聴き手のために鳴っているはずです。うちのリビングでは窮屈そうだった低音が、ちょうどいい広さの部屋で伸び伸びと響いている。そう想像すると、少し気持ちが軽くなります。

まとめ

大型スピーカーを手放して、オーディオを小さくするときの流れを振り返ります。

  • 先に「残す一組」を決め、スピーカーとアンプは組で考える
  • 大型スピーカーは1本35kgほどになることもあるので、運び出しの手段から考える
  • 元箱、取扱説明書、前面のネット、スパイク、リモコンを一か所に集める
  • スピーカーやアンプは家電リサイクル法の対象外で、捨てるなら自治体のルールに沿って出す
  • 相模原市の例では、高さか幅が60cm以上のスピーカーは1本800円で、建物の外の道路際まで自分で出す
  • 自治体によっては、高齢の方などを対象に建物の中から収集する仕組みがある
  • 音が出るなら、捨てる前にオーディオに慣れた店で一度査定を受ける
  • エッジの傷みなどに気づいても直さず、そのまま伝える

次の週末、ご家族で機器の前に並んで、残したい一組を決めてみてください。手放す機器の型番を紙に書き出し、元箱がどこにあるかを確かめ、スピーカーの高さを測っておく。そこまで済めば、あとはお店に電話するか、自治体に申し込むかを選ぶだけです。